ノータイトル

夕焼け小焼けの音楽が流れ始めた。

良い子のみんなはお家に帰る時間です、そんなアナウンスを遠くに聴きながら、灰色の煙を吐き出す。

 

随分日が短くなったな、と暗くなり始めている夕日を眺める。

眩しい光に目を細めて、遠くの温もりに恋い焦がれるかのように、見つめる。

そんな時間ももう一瞬だ。

気付けば辺りは暗くなっている。

見つめていたはずなのに、いつ姿を消したのか、オレンジ色の太陽の代わりに薄暗い靄を被った月が出ていた。

 

今夜も、良い子じゃない君は帰ってこない。

 

溜息を押し殺すように、煙を吐いた。

きっと明日また管理人のおばちゃんに「また煙草吸ってただろう!」なんて怒られる。

 

笑いがこみ上げて、小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

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帰ってこない男と待ち焦がれるバカな女