ノータイトル
夕焼け小焼けの音楽が流れ始めた。
良い子のみんなはお家に帰る時間です、そんなアナウンスを遠くに聴きながら、灰色の煙を吐き出す。
随分日が短くなったな、と暗くなり始めている夕日を眺める。
眩しい光に目を細めて、遠くの温もりに恋い焦がれるかのように、見つめる。
そんな時間ももう一瞬だ。
気付けば辺りは暗くなっている。
見つめていたはずなのに、いつ姿を消したのか、オレンジ色の太陽の代わりに薄暗い靄を被った月が出ていた。
今夜も、良い子じゃない君は帰ってこない。
溜息を押し殺すように、煙を吐いた。
きっと明日また管理人のおばちゃんに「また煙草吸ってただろう!」なんて怒られる。
笑いがこみ上げて、小さく笑った。
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帰ってこない男と待ち焦がれるバカな女
ひとりで生きる
他人の感性に触れていると、頭が割れそうになる。
自分の考えをどれも正しいなどと思ってはいないけれど、自分にとる「常識」に当てはまらない人間が多すぎる。
当たり前だ。結局全ては自分の物差しで測っていること。
それでも、
異性を見下した発言とか、正しい知識を持たない批判とか、
自分が正しいと勘違いして、簡単に他人を罵るとか。
そういうのには虫唾が走る。
どうしてそういう考えができるのか。
どうして簡単に人を傷つけられるのか。
彼等は結局SNSというネット上でしか発言にできない弱者だ。
匿名だから、相手を知らないから、何を言っても許されると思っている愚か者だ。
今やSNSを失っては成り立たない世界になってしまった気がする。
そこで始まる出会いもあれば、そこで終わる関係もあるのだろう。
目の前に対峙して、同じような発言ができるにかと問えば恐らく大半の人間が言葉を飲むだろう。
小さな画面とばかり睨み合い、小さな世界で驕り笑っている。
気味が悪い。
けれど私も、もうそれを手放すことはできない。
気分が悪くなっても、虚しくなっても、
自分の世界はもうそこにしかないのだという気さえしてしまうのだ。
悲しい。世の中はいつからこんなに、寂れてしまったのだろう。
活気溢れる商店街を失い、街を歩く人の殆どが小さな画面を見つめている。
誰かと馬鹿みたいに笑い合うこともなくなり、
下校中の小学生を見て懐かしさを覚える。
死に行くその日まで、私の世界はこの小さな箱の中だけなのだろうか。
話したいことすべて詰め込んで発信したって、
この世界に、私に興味を持つ人間はいない。
誰にも読まれぬボヤキがただ、流れ落ちていく。
拾われなかった感情は、捨てさられていくのみだ。
虚しくて、悲しくて、寂しい。
私は決して、ひとりでは生きてはいけないのに。
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SNSが嫌い。
でも依存症。
これでひとり書けるな。メンヘラちゃん。
灰色の人生には何もない
何にも楽しくなくて、ふと感じるのは人生に対する虚無。
ひとときの間、暇(いとま)をやり過ごす趣味なら沢山ある。
お金をどれだけ費やしても、結局はそれだけなのだと痛感する。
熱に浮かれていたあの頃にはもう、戻れはしないのだ。
「あの頃に戻りたい」
既にそんな感情さえも失ってしまったのだろうか。
ぼんやりと、遠くを見つめたところで何があるわけでもない。
私は、こうやって生き続けていくのか。
人はこうして、死んだように生きるのか。
こうはなりたくないと、神奈川を抜け出し見知らぬ地へやってきたはずなのに。
何を、間違えたのだろうか。
私の選択は、いつだって間違いだらけのような気さえしてくる。
「生きがい」と呼べるもののない日々は、あまりにも苦痛だ。
たとえ趣味がいくらあっても、日々を潤すものではないのだ。
体の中で静かに存在を大きくしていく虚無は、少しずつ、ひっそりと私を蝕んでいく。
「死んでしまいたい」
思っていないはずだった言葉が、思わず口をついて出てくるほどに、恐らく私は、参っている。
逃げだなんだと言われても、もういい。
女子大生A
2019年 10月 9日
22:56 記
明日も早いからと、いつもより早めに布団に潜った。
電気を消したはずの室内がほんのりと明るい。
光源を探れば、閉め忘れたカーテンの隙間から赤ぼけた月が照らしていた。
今夜の月はやけに明るい。
ようやくと言っていいくらいに長い夏を終えて、秋の涼しさを感じさせる日だった。
昨日までは頭の少し上くらいだったはずの月の位置がやけに高く見えて、なんともなしに嘆息を零した。
「秋だなあ」
短い秋が来る。
涼しさと寒さの間をすり抜けていくように、秋は気付けば冬に変わっている。
いつもより高くなった月をじっと見つめて、静かにカーテンを引く。
秋が来る前に、明日の朝がやってくる。
眠らなければいけない。
代わり映えのしなくなった日常に、今度はわざとらしく息をついて、1日を終わらせるためにベッドに登った。
今日も今日とて。
けれど、ほんの少し明るい外に、少しだけ明日への期待を抱いて、眠りにつく。
さようなら、今日のわたし。
明日のわたしに、バトンタッチ。
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女子大生A
3回生。今月21歳の誕生日を迎える。
お酒も煙草もしないが真面目な性格と言われたらそうではなく、高校時代は夜遊びをよくしていた。
恋人と呼べる相手はいないが、見た目の印象の割に男友達が多い。大学の友人からはよく驚かれる。
伸ばしていた黒髪は、夏の暑さに耐えかねてショートにカット。ついでに明るく染めた。
サークルや部活には入っておらずバイト三昧の日々だが、それなりに充実した日々を送っていると思ってはいる。
ただ、こんな秋の夜長には感傷に浸ってしまうような乙女心も持っていたり...
「1日を生きるのはわたしであり、明日のわたしは別人である。」